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SAKURA COLOR [2015]


「やどりして春の山べに寝たる夜は 夢のうちにも花ぞ散りける」
<出典>古今集 春下・紀貫之



日本において桜は、日本人の心の特別な地位にある花である。
毎年決まった時期に、刹那に咲き散る姿に人は集い、春の歓びを謳歌する。

花見の文化は今に始まったことではなく、
大昔から桜の開花は春の指標として、大切に祀られていた。

さて、そんな大昔からの花見風景と比べ、随分と変わっていってしまったことがある。


夜桜の風景。

月の光と僅かな丁で愉んでいたあの時とは打って変わり、
現代は様々なネオンライトが、空の色を変えてしまうほど憚っている。

信号機や客寄せの看板、街灯の暴力的な色彩が、桜の花に襲いかかる。
私はその光景の異様さに、文化の大きな変遷を感じた。


農の歓びを限りなく限界まで失ってしまった昨今。
どこか根を張ることの出来ていない、浮かれた享楽にいつまで心を預ける事が出来るのだろうか。
これからの変化が見物である。

<参考文献>
山田孝雄「櫻史」
チャールズ・チャップリン「ライムライト」